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MFAでは防げない。Infostealer(インフォスティーラー)とAiTMの違いと対策

AI活用ブログPhoto: Egor Litvinov / Unsplash

ニュースピック: 情報窃取ウイルス猛威 日本の大手企業、4社に3社が感染 AIアカウントも標的に - 日本経済新聞

概要

読者

広くビジネスマン。AIを使っている方(業務でも個人でも)や、Microsoft 365やEntra IDを運用している情シス担当者。

タイトル案

MFAでは防げない?InfostealerとAiTMの違いとAIアカウントを狙う脅威、そして対策

はじめに

毎日のように目にする「情報窃取」のニュースの中でも、「大手企業の75%が感染」という高い数値と「AIアカウントが標的」という点が注目されています。本記事では、世界的な情報窃取のトレンド、Infostealer(情報窃取型マルウェア)とAiTM(中継型フィッシング)の違い、そしてAIアカウントが狙われる具体的な理由と対策について解説します。

ニュースの要点と背景

世界中でInfostealer(情報窃取型マルウェア)による情報漏洩が急増しています。日本経済新聞の記事では、日本大手企業の4社に3社が感染し、特にAIアカウントが新たな標的となっていると報じられています。

2026年現在、LummaC2、StealC、RedLineといったInfostealerが主流で、これら上位3種だけで感染の約75%を占めるとも言われています。(出典:インフォスティーラーとセッションCookie窃取 - MFAを回避するpass ...)

Infostealer(情報窃取型マルウェア)とは

Infostealerは、端末にマルウェアを感染させ、ブラウザに保存されたパスワード、Cookie、セッショントークン、クレジットカード情報、認証アプリ情報、VPN設定など、多岐にわたる認証情報を窃取します。

窃取されたCookie、特にセッショントークン(つまり各種サービスにログイン済みの状態)用いて、Microsoft 365やClaudeといったSaaSに不正アクセスが行われるケースが確認されています。

AiTM(中継型フィッシング)攻撃とは

AiTM攻撃は、マルウェアを必要とせず、利用者自身が偽サイトにログインすることで発生するフィッシング手法です。

  1. ユーザーが正規サイトそっくりの偽サイトにアクセスします。
  2. 偽サイトは、ユーザーが入力した認証情報を本物のサービス(例: Microsoft 365)へリアルタイムで転送し、MFA(多要素認証)を含む認証プロセスを中継します。
  3. 認証成功後、正規サイトから発行されるセッションCookieやアクセストークンを攻撃者が横取りします。

AiTM攻撃はMFAを突破するのではなく、MFAが成功した結果として発行されるセッションCookieやアクセストークンを盗むため、MFAを設定していても被害に遭う可能性があります。(出典:多要素認証を突破する「AiTM攻撃」とは?その対策は ...)

ログインセッション窃取による具体的な被害ケース

ログインセッションを抜き取られた場合の具体的な被害は以下の通りです。

  • 一般社員(Microsoft 365ユーザー)
    • Microsoft 365(Outlook、OneDrive、Teamsなど)への不正アクセス。
    • 機密情報の閲覧・窃取、メールの不正送受信、社内チャットでのなりすまし。
    • OneDrive上のファイル改ざん・削除。
  • AI開発者/データサイエンティスト(AIアカウント利用者)
    • AIプラットフォーム(Azure OpenAI Service、Claudeなど)のアカウントへの不正アクセス。
    • 高額なAI利用枠の不正消費、開発中のモデルや学習データの窃取、APIキーの悪用。
    • 実際にアンソロピック社では、ユーザーのログイン済み認証情報が盗まれ、売買されていることが確認されています。業務でClaudeを使用している場合、高額なAI利用枠の不正消費やAPIキーの悪用だけでなく、情報や取り込まれたナレッジが情報漏洩するリスクがあります。
  • システム管理者/IT担当者(クラウド資格情報保持者)
    • クラウド管理コンソール(AWS、Azure、GCPなど)への不正アクセス。
    • インフラの停止・改ざん、全社的なデータ窃取、バックドアの設置、ランサムウェア展開の足がかり。

考察と見解:なぜ今、AIアカウントが狙われるのか

1. Infostealerの進化と脅威の深刻化

Infostealerは、単なるパスワード窃取から「ログイン済みの状態で、クラウドIDそのものを奪う」形へと進化しています。MFAが防壁となっていた時代から変化し、ログイン済みのセッション状態が侵入された場合、対処がより困難になっています。

2. AiTM攻撃によるMFAの回避

AiTM(中継型フィッシング)によりMFAが回避される事例が増加しています。攻撃者はユーザーと正規サイトの間に偽のプロキシサーバーを挟み込み、認証完了後に発行される「セッションCookie」を横取りすることでMFAを回避します。

3. 生成AIの悪用リスク

生成AIの進化により、偽サイト、偽広告、偽アプリの作成が容易になっています。これにより、フィッシング詐欺の手口が巧妙化し、今まで以上に注意が必要です。

4. 攻撃プロセスの高速化

認証情報の窃取から転売、企業システムへの侵入までのプロセスが高速化しています。

  1. PC感染
  2. Infostealerによりブラウザ内の情報を窃取(ID、パスワード、Cookie、セッショントークン、クラウド資格情報、開発者シークレット、暗号資産関連情報など)
  3. 窃取された情報を用いて企業SaaS / クラウドへの不正アクセス
  4. 情報窃取、ランサムウェア・恐喝などへ発展

5. リスクのある端末の広がり

「業務アカウントへログインできる端末全部」がリスク対象となります。特に管理状況が不明な以下の端末が問題視されます。

  • 会社PC(管理済み)
  • 自宅PC(管理外)
  • 個人Mac(管理外)
  • 委託先PC(管理状況不明)

6. 今後のセキュリティの考え方:Identity侵害への対応

顧客側の資格情報侵害が原因となるケースが増加しており、これが今後の企業セキュリティにおいて重要な視点となります。社員のIdentityを盗むことで、社内ネットワークを直接攻撃せずとも不正アクセスが可能となります。

推奨される対策

企業へのサイバー攻撃が激増する中、セキュリティを高める必要性があります。特にMicrosoft 365 / Entra IDを利用している環境では、以下の対策をセットで検討することが重要です。

  1. Defender / EDRによる端末監視: Infostealerのようなマルウェアの検知と駆除を強化します。
  2. Entra IDのサインインログ監視: 不審なログイン試行やセッション利用を早期に発見します。
  3. MFA(多要素認証)の導入・強化: MFAは依然として重要ですが、AiTM攻撃への耐性を高めるためにFIDO2/パスキーなどのフィッシング耐性認証の導入も検討すべきです。
  4. Conditional Access(条件付きアクセス)の活用: アクセス元IPアドレス、デバイスの状態、リスクレベルなどに基づいてアクセスを制御し、管理外端末からのアクセスを制限します。
  5. 管理外端末からのアクセス制御: 業務アカウントへのアクセスを許可する端末を限定します。
  6. セッション・トークン侵害を想定した対応手順の確立: 侵害発生時の迅速な対応計画を策定します。
  7. 感染確認時の対応徹底: パスワード変更だけでなく、全セッション失効まで実施します。

特に7番目の対応が重要です。Infostealer感染端末を駆除しパスワードを変更するだけでは、既に盗まれたセッション情報が残存し、攻撃者が引き続きアクセスできる可能性があります。

現代のIdentity侵害を考慮し、端末だけでなく認証セッションまで侵害された可能性を前提に調査・対応することが不可欠です。

被害時は以下の対応が必要です。

  • パスワード変更
  • 全セッション失効
  • MFA再登録確認
  • Inbox Rule確認
  • OAuthアプリ確認
  • Sign-in Log確認

社内SEとしての使いどころ

対象範囲はサーバーではなく、個々のユーザーまでととても広く、感染時はユーザーのログイン情報が残る全端末に影響があり、対応が非常に厄介。

ただ、Microsoftアカウント管理センターのEntraやPurviewである程度の対策はできる。狙われたら対処が難しいものの、狙われにくくすることはできるはず。

まずは最低限の対応に加えて、ウイルス対策ソフトのポリシー強化、Entra IDのサインインログ監視のルーチン、特に権限がつよい社員のMFA義務化は継続して進めたいです。

試してみたいこと

各種ポリシーの見直し、サインインログの監視について、さらに注力する。

用語解説

  • インフォスティーラー (Infostealer): 端末から認証情報(パスワード、Cookie、セッショントークンなど)を盗み出すウイルス(情報窃取型マルウェア)。
  • AiTM (Adversary-in-the-Middle): 中継型フィッシング。攻撃者がユーザーと正規サイトの間に偽のプロキシサーバーを挟み込み、認証情報をリアルタイムで窃取し、セッションCookieを横取りすることでMFAを回避する攻撃手法。
  • MFA (Multi-Factor Authentication): 多要素認証。2つ以上の異なる認証要素(知識情報、所持情報、生体情報)を組み合わせて本人確認を行う認証方式。(出典:MFA(多要素認証)とは?仕組みや二段階認証との違い、導入 ...)
  • Cookie: ウェブサイトがユーザーのブラウザに保存する小さなデータ。ログイン状態の維持などに使われる。
  • セッショントークン: 認証済みであることを示す一時的な証明書。
  • EDR (Endpoint Detection and Response): 端末(エンドポイント)の活動を継続的に監視し、脅威を検知・対応するシステム。
  • Conditional Access: 条件付きアクセス。Microsoft Entra ID(旧Azure AD)の機能で、ユーザー、デバイス、場所などの条件に基づいてアクセスを制御するポリシー。
  • FIDO2 / パスキー: フィッシング耐性を持つパスワード不要の認証標準。

参考リンク

一言まとめ

Infostealerは「端末に侵入してCookieや認証情報を盗む攻撃」、AiTMは「偽ログイン画面で認証処理を中継してセッションを盗む攻撃」。MFAは重要だが万能ではなく、前者はDefenderやEDRが有効だが、後者はフィッシング対策やFIDO2/パスキーなどの認証強化が重要となる。AIアカウントも標的となり、高額な利用枠の不正消費や機密情報の漏洩リスクがあるため、多層的な対策が不可欠。

執筆・運営: Asaki

生成AI.net運営者。本業は社内SE(情報システム担当)で、社内の課題解決・トラブルシューティングに10年以上従事。その実務経験を活かし、中小製造業の現場目線で生成AI・DX活用の情報を発信しています。

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